次の朝。それも、まだ薄暗い早朝。私はまたしても、けたたましいパトカーのサイレンを聞くこととなる。慌てて飛び起きて、岩の隙間から国道を覗くと、何台かのパトカーが猛スピードで別荘の方に向かっていた。
私は嫌な予感がした。
もしかして、また、誰か殺されたのだろうか?もしそうだとしたら、きっと今回も、私が犯人にされているに違いない。
私は何とも言えない不安を抱えて洞窟内に身を潜めていた。
昼過ぎ頃、丁度私のいる岩場に、何人かの警官が来た。きっと、私を探しているのだ。
私は、岩の隙間から覗かれても見付からない様に、いよいよ身を小さくした。警官たちが話している声が、はっきりと聞こえる。と、言う事は、こちらの物音も、きっと聞こえるはずだ。私は、息をする音さえ気を使いながら、じっと警官たちが過ぎ去るのを待った。
「こっちにはいないな。隠れるところも無いし」
「そうだな。でも、一体何処にに隠れてるんだろうな?」
「それにしても、嫌な事件だな。これで三人目だぞ」
やっぱり、今日も誰かが殺されたんだ。そう思いながら、私は息を殺して、警官たちの話しに耳を傾けた。
「大体、なんで犯人は、毎回遺体の側にあんな暗号を残していくんだろうな」
警官たちはその後しばらくその辺りをウロウロした後、どこかへと行ってしまった。
なんですって!!
と、言う事は、また今回も現場にあの数字の暗号が残されていたんだ。
やっぱり、あの暗号が、真犯人を探す手がかりである以上、私は何としても3つ目の暗号を集めないといけない。
私は、今日も、夜になるのを待って、洞窟を抜け出し、別荘へと向かった。
別荘は、昨日にも増して、明るかった。そして、別荘の周りを警官が定期的に巡回している。
私は警官が巡回を終え別荘の中に入ったのを見届けて、またベランダの近くの木に近づくと、周りを充分に気を付けながら、よじ登った。そして、ベランダに立つと、一つ一つの部屋前の前を注意しながら通過した。
三人目の犠牲者が誰なのかを推測するのは簡単だった。昨日は電気が付いてたのに、今、電気がついていない部屋は、野上君の部屋だ。
私はそっと、野上君の部屋に近づいた。
窓から中を覗くと、ふと、部屋のドアに目が行った。ドアの下に3センチ程の隙間があって、そこから廊下の光と廊下を歩く人の足の影が見えたからだ。
そして、ふとある考えが私の頭を横切った。
初めに私が藤田君と居た部屋も、密室なんかじゃなかったんだ。
あれだけの隙間がドアの下にあれば、外から鍵をかけて、その後で部屋に鍵を滑り込ませる事なんて、簡単だ。二件目と三件目の犯行が、密室だったのかは、私には分からないけど、私を犯人にしようとしている以上、密室にはなっていなかったんじゃないだろうか。
こうして分かって見ると、こんな事はあまりにも単純で、トリックとさえ言えないような幼稚な手だ。
私はふとその時、ある疑問にぶち当たった。
犯人は、どうして初日に、このドアの下の隙間に気付いたんだろう。
私が今気付いたのは、たまたま部屋が暗いのに廊下が明るいからだ。でも、あの日、私たちは遅くまでお酒を飲んでいて、みんなで一緒に二階に上がり、それぞれの部屋に別れたのだ。もちろん廊下は暗かったし、みんなも部屋に帰ってすぐに寝たはずだ。だったら、いつ、このトリックを思いついたんだろう。
考えられるのは・・・栄子だ。
栄子ならこの別荘の持ち主だし、ここにも来たことはあるはずだから、知っててもおかしくはない。
でも、これだけで栄子を犯人だと決め付けるのは早過ぎる。
萌は一人だけあの日、お酒を飲まなかったし、コーヒーを入れてきたのだって萌だった。もし、萌が犯人じゃないなら、犯人はどうやって私に睡眠薬を飲ませるつもりだったんだろう。
それに、博人だって・・・
今回の被害者は三人とも男だし、私を誰にも見付からずに藤田君の部屋に運んだりするのにだって力が要る。そんな事を果たして栄子や萌が、女手だけで出来ただろうか?
とにかく、考え出すと、みんなが怪しく思えてくる。でも、まだ情報が足りない。
私は、野上君の部屋の中に懐中電灯の光を向けた。
やっぱり床には何かが残っている。
私はまた、昨夜のようにいろんな角度で光を当ててみて、何とか第三の暗号を読むことに成功した。
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私は考えに考えた。とにかく、私の容疑を晴らすため、そして、これ以上犠牲者を増やさないためにも、一刻も早く、この暗号を解かなくてはいけない。
そして---私は腹をくくった。
残っているのは
萌・栄子・博人の三人だ。
犯人と直接話をしてやる。
もし、大声を出されて、警察に囲まれたとしても、今度は私にも切り札がある。逆に、私が犯人に襲われそうになったら、こっちが大声を出せば良いだけの話だ。
とにかく、こんな事で私の人生、棒に振るわけにはいかない。私は覚悟を決めた。
----犯人はやっぱり、私の仲間の中に居る----
<ぷりこからの挑戦>
さあ、じっくり考えてください。これから犯人の部屋へ行きます。
一番怪しいのは誰ですか?
●萌の部屋へ行く●
●栄子の部屋へ行く●
●博人の部屋へ行く●