翌朝も、目覚めは最悪だった。
私は萌に起こされるまで目が覚めなかったが、起きた瞬間、萌の表情を見て、何かが起こった事はすぐに分かった。
萌は私の予想通りの事を言った。
「美咲。野上君が、殺されたわ」
私が体を起こすと、萌は私にメモを渡した。
「これ、またあの数字のメッセージが残されてたの。すぐに取調べがあるから、わたし、もう下に降りるね」
私はそのメモを受け取った。メモには萌が写し取ってくれた、数字が書いてあった。
12583/14728369
私がメモを見ていると、萌が出て行き際に振り返った。
「念の為、今日はずっとクローゼットの中にいたほうが良いかも。だんだん警察も厳しくなってきてるから」
私が頷いたのを確認して、萌は部屋を出ていった。
私はじっとそのメモを見て、考えた。何かが閃きそうなんだけど、今一つすっきりしない。それに、昨日考えながら寝てしまった事も、思い出せないままだ。
私の心の中には今や犯人に対する怒りしかなかった。
犯人が私を犯人に仕立て様としたことも、もちろん悔しい。でも、それよりも悔しいのは、私たちの仲間だと思っていた誰かが、本当は恐ろしい獣の顔で私たちの中に混じっていて、今もバラバラに逃げ惑う私たちを、笑いながら眺めていると言う事だ。しかも、犯人は、今でも仲間の顔をして、みんなの中にいる。
私は怒りで自分がどうにかなってしまいそうだ。犯人はこの後どうするつもりなんだろう。まだ殺人を続けるつもりなんだろうか。残っているのは萌、栄子、博人の三人だけだ。
その時、私の中で、ある考えが浮かんだ。
私は慎重に考えた。今が勝負どころだ。
私の考えが正しければ、犯人を見つける手がかりになるかもしれない。
でも、この事を警察にどう伝えよう・・・
少し考えて、私は腹をくくった。
リビングに降りて行って、みんなの前で話してやる!!
警察は私を捕まえようとするだろうけど、そうなったらそうなった時だ。
きっと、萌が私の二件目と三件目のアリバイを証明してくれる。
それに、最悪、私が捕まったとしたら、もうこれ以上殺人は起きないだろう。
私は、そう覚悟を決めると、部屋を出て、リビングへと降りていった。
リビングでは、みんながソファーに座り、事情聴取を受けていた。
私の姿を一番に見つけたのは、栄子だった。
小さく悲鳴を上げた栄子の声に、みんなが私を振り返った。
警官が私に駆け寄り、捕まえようとしたが、私はその手を軽く避け、ソファーへと近づいた。今、みんなの前に座り、話しをしている人が、きっと一番の責任者だ。私はその刑事さんの前に立った。
「山口 美咲です」
何人かの警官が私に駆け寄ろうとしたが、私はかまわずに、その刑事さんだけを見て、続けた。
「私は犯人じゃありません。犯人の手がかりを掴んだからここへ来たんです」
私の言葉に刑事さんは駆け寄る警官を手で静止した。
「犯人があなたでないなら、今まで何処にいたんですか?」
刑事さんの問いには萌が答えてくれた。
「私の部屋です。夜はずっと一緒にいました。美咲は本当に犯人じゃありません」
「では、何故、身を隠さないと行けなかったんですか?我々はずっと、あなたを追っていたんですよ」
「それは・・・犯人が私を犯人に仕立てようとしたからです」
刑事さんは納得行かない様だったが、私はかまわず続けた。
「最初の事件で、私は確かに藤田君の部屋にいました。そして、部屋には鍵がかかっていました」
鍵のことは、やっぱり初耳だったらしく、刑事さんは、少し表情を変えた。
「私は睡眠薬を飲まされて、犯人によって、密室の中に運ばれたんです」
刑事さんは、私に話しの続きを促すように、手で合図をした。
私はみんなの顔を見渡した。
そして、もう一度、考えをまとめた。
大丈夫だ。ここまで来て、いまさら逃げられない。
私は思い切って口を開いた
<ぷりこからの挑戦>
さあ、じっくり考えて下さい。これから犯人を追い詰めて行きます。
その切り口は?