第 3 ス テ ー ジ



 
 頭をフル回転させる篠田の苦悩とは裏腹に、4日目はあっという間に過ぎ、後10分程で5日目の午前0時、最後の第3ステージを迎えようとしている。
 依頼主であるプリオが心配そうに篠田を見ているが、篠田自身が話しかけられる雰囲気ではない。
 プリオは居ても立っても居られない様子でただリビングの中をウロウロとうろつきまわっている。
 そうこうしている間に、早くも時は経ち、屋敷中の時計が、第3ステージのスタートの合図のように、一斉に鐘を鳴らし出した。

 
・・・回数は・・・8回

 篠田がそれをメモしていると、プリオがおもむろに口を開いた。
 「結局3日とも、スタートの鐘は回数が違いましたね」
 篠田は返事をせず、なんとなく聞き流していたが、ふと、何かが引っかかった。
 そういえば、毎回、『何時に何回鐘が鳴るか』を漠然とメモしていたが、同じ時間に違う回数の鐘が鳴るとなると、そこにもきっと意味があるはずだ。
 もちろん、0時の鐘がスタートの合図だなんて、始めっから思ってはいないが、この3日間、0時に鳴った鐘の回数がバラバラなのはこの謎を解くヒントにはなるのかも知れない。
 篠田がむっつりと考え事をしているので、プリオはそっと部屋を出ていこうとしていたが、そこを篠田に呼びとめられた。
 ここは一人よりも二人の方が良い。
 お互いの何気ない一言が、また何かのヒントになるかもしれない。
 そう言った意味のことを、篠田が言うと、プリオは勢い勇んでそれに同意した。
 どうやら自分の部屋へ帰っても、のんびり寝ていられる気分では無いらしい。
 とにかく、リビングに向かい合って座ると、2人で次の鐘を待った・・・
 
 そうしてまた、1日は過ぎ、日付が変わり、6日目午前1時。
 とうとう最終ステージが音も無く終了した。

 第3ステージの結果はこうだ。

 
第3ステージ 午前 0時スタート
     午前 0時・ 8回
     午前 4時・20回
     午前 8時・12回
     午後 1時・ 3回
     午後 2時・ 6回
     午後 6時・11回
    翌午前 0時・ 1回
 そして、午前 1時 第3ステージ終了


 篠田とプリオは、お互いに気付いた事を言い合おうとしたが、解からない事だらけで、話し合いと言うレベルではない。
 「やっぱり0時の鐘の回数が毎回違うってだけじゃ、何の糸口にもならないんですかね・・・」
 プリオが回数を書いたメモを見ながら、大きくため息をついた。

 ところが、同じように食い入るようにメモを見ていた篠田が、この言葉に敏感に反応した。
 そういえば!!
 午前0時の鐘が毎回違っていたのとは逆に、ステージ終了である翌日の午前1時の鐘は一回も鳴らなかった!!
 いや、一度も鐘の鳴らなかった時間は他にもあるが、この『翌日の午前1時』は特別だ。
 大体、このチャレンジ自体、時間が『午前0時から翌日の午前1時まで』なんて、中途半端過ぎる。
 普通は切り良く『午前0時から午前0時』にするものではないだろうか?
 しかも、翌日の午前1時に鐘が鳴ったのならともかく、一度もその時間には鐘は鳴らなかった。
 ・・・となると、各ステージの制限時間を翌日の午前1時までにしなければならなかった理由が必ずあるはずだ!!!
 これはきっと、この謎を解く大きな手がかりになるはずだ。
  
 手がかりは全て出揃った。
 ここから先は推理あるのみだ。
 何としてもこの謎を解いて見せる!!
 篠田はプリオの手をしっかりと握った。

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