僕が、訳も分からず その3人を見ていると、
そのうちの一人の、マフラーを
鼻のところまで巻いているおばさんが
変な声で、僕に話しかけてきた
「女の子も 帽子も 私たちが預かっている」
僕は すっかりパニックになってしまった。
どういう事だ?
誘拐?泥棒?
どっちにしても、きっと
こいつらは 悪い奴だ!!
僕は とっても怖かったけど 勇気を出して叫んだ
「みずほちゃんと帽子を返せ!!」
思いっきりにらみつけると、
そのおばさんは、大笑いをしながら言った。
「子供が道具小屋なんかに入るからよ!
私たちの取引を見てしまった あの子がいけないのよ。
だから、さらってやったの」
どういうことだろう
みずほちゃんは そんなこと言ってなかったけど、
ホントは気づいていないだけで、
何かの取引現場でも 目撃してしまったのかな?
そうだとしても、このまま
みずほちゃんを 放っておく訳にはいかない。
何とかして 助けないと。
僕は ホントは めちゃくちゃ怖かったけど、
それが奴らに バレない様に
わざと強気に 言った。
「公園なんかで 悪いことするほうがいけないんだ!!
みずほちゃんも 帽子も 返せ!!」
マフラーのおばさんは 
ちょっと 僕を見て、
後ろにいる 残りの2人と
何か 小声で相談した。
そして、また僕のほうに向き直ると、
「じゃぁ、ひとつ、
私たちと、勝負してみる?」
と、言った。
僕が 返事に困っていると、
僕にかまわずに 話しを続けた。
勝負の内容は、こんな感じだ。


横の壁際の 机の上に置いてある 5個の帽子は
赤いリボンの帽子が2個
白いリボンの帽子が3個
向こうの壁に向かって イスが3個 縦に置いてある


僕と、マスクをしたおじさんと、
帽子とサングラスのおばさんの
3人が イスに座る


3人とも 5個の帽子のうちの
どれかをかぶらされるけど
自分の帽子を 取ったりしてはいけないし、
振り返ったりしても いけないので
自分より前の人の帽子しか 見えない


自分の帽子のリボンの色を、一番に当てたら勝ち!!


「もちろん、不公平じゃない様に
仲間にも 自分のリボンの色は教えたりしないよ。
それから、もうひとつ 大切なルールは
自分のリボンの色がわかったら、
必ず わかった!! って言うこと」
おばさんが言う 勝負のルールは
だいたい分かった。
でも、そんな勝負をして、
僕に勝ち目はあるんだろうか・・・

だけど、僕は勝負を降りる訳にはいかない。
絶対に 勝負に勝って、
みずほちゃんと 帽子を取り戻さなくっちゃいけないんだ!!
おばさんは、僕をからかって楽しんでいるように
僕に言った.
「さぁ、坊や、どうする?」
「もちろん。勝負してやる!!」
僕が答えると、おばさんはまた、楽しそうに
「じゃあ、ハンデをあげる。
3つのイスの、どれに座るかは、
一番に選ばせてあげるよ。
さぁ、どこに座る?」
と、言った。
もちろん、一番後ろのイスが、
前の2人のリボンが見えて、有利な気がする。
一番前だと、何にも見えないし、
二番目だって、一番前の人しか見えない。
でも、そんなに単純に決めてしまっても良いんだろうか。
僕は、一生懸命考えた。
そして・・・

一番後ろのイスに座った
真中のイスに座った
一番前のイスに座った