僕はの方を、みんなが同時に振り返った。
当たったんだろうか、
それとも・・・

マフラーのおばさんが、また、楽しそうに笑いながら、
僕の方へと 近づいてきた。
「なかなか、勇気のある子だね、ほら、
自分の目で、確かめてごらん」
そう言うと、僕の頭の上から、帽子を取って、
それを、僕へと手渡した。
その 帽子の リボンの色は・・・・・

違う!!

僕は、失敗してしまった。
勝負に負けちゃったんだ!!
みずほちゃんは、みずほちゃんの帽子は、
そして、勝負に負けた 僕は
一体どうなるんだろう・・・
僕が何も言えず、呆然としていると、
また、マフラーのおばさんが、憎たらしく笑った。
「失敗したけど、勝負を正々堂々と受けてたった
おまえの勇気と、友情に免じて、
今回は、女の子は返してあげるよ」
「ホント!!」
僕は思わず、おばさんの腕をつかんだ。
「ホントよ。さぁ、この小屋の外に、女の子が待ってるよ。
早くあの子を連れて、家に帰りなさい」
僕は、おばさんの言葉も半分しか聞かずに、
外に飛び出した。
そこには、ちゃんとみずほちゃんの姿があった。
みずほちゃんは、一人でポツンとベンチに座ってて、
僕を見つけると、にっこり笑って、手を振った。
僕はとにかく、一刻も早く、この場所を離れたくて、
みずほちゃんの手を取ると、
ちからいっぱい走った。
やっと、公園の反対の端っこまで来て、
ようやく走るのをやめた。
「みずほちゃん、大丈夫?怪我とかない?
ひどいことされなかった?」
僕は、手近なベンチを見つけると、
そこにみずほちゃんを座らせて、聞いた。
みずほちゃんは、キョトンとした顔で、僕を見ている。
「何にも。ひどいことなんてされてないよ」
みずほちゃんが、あまりにものどかな顔をするから、
僕の方が、逆にキョトンとしてしまう。
「怖い顔して、どうしたの?」
みずほちゃんの問いに、
僕は一気に体の力が抜けてしまった。
どうやら、僕は、
自分が思ってた以上に 緊張してたらしい。
僕は、僕の身に起こった出来事を、
みずほちゃんに話して聞かせた。
みずほちゃんは、初めて恐ろしそうな顔をした。
どうやら、みずほちゃんは、
小屋から連れ出された後、ずっとあのベンチに
顔中ひげ面のおじさんと座っていたらしい。
しばらくして、おじさんに待っているように言われて、
一人でいたところに僕が来たそうだ。
僕は、それを聞いて、
また、恐ろしくなった。
僕が来たのが少しでもずれてたら、
僕は、そのひげ面の男とも 鉢合わせしていた。
とにかく 今日は、もうすっかり陽も傾いている。
僕らは、明日また帽子を探そうと
約束をして、家に帰ることにした。

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