---木の下で---
イライラする・・・
ロイはさっきまでの会議の内容を思い出しては
再び沸々と湧き上がってくる焦りを抑える様に
動物園の熊よろしく、部屋をぐるぐると歩き回っていた。
全く!イライラする!!
会議の内容は、エルリック兄弟の旅と任務との兼ね合いに終始した。
自由な旅を許されている兄弟が東部へ向かっていることは
今や東方司令部の皆が知るところだが
その東部が内戦のキーポイントであり危険な事も事実。
丁度今、この東方司令部に立ち寄っている兄弟を
このまま任務と称してとどめるべきだと言うロイの主張は
「では、その兄弟を”斥侯”として東部へ送ろう」
という、あらぬ方向へと発展した。
それでは・・・
「意味がないんだ!!」
ロイは忌々しそうに吐き捨て、窓の外に目を向けた。
そこには、何も知らずに呑気に木の下に寝そべるエドがいた---
全くもって、呑気なものだ。
自分が一体どんな思いでいるのか分かっているのか!!
さっきまでとは全く別のことに苛立ちを覚えながら
ロイはツカツカと足早に外へ飛び出すと
エドが寝ている木のそばに立った。
自分のイライラの種がここで呑気に昼寝なんかしている!!
なにやら妙に腹が立って、
そこに転がっていた小石をエドに向かって投げてみる。
小石は”パサッ”という音と共に
寝ているエドのマントを少し揺らして落ちただけだ。
当の本人はピクリともせずに
くうくうと気持ちよさそうな寝息を立てている。
更にムカついてちょっと大きな石を投げてみる。
今度の石はエドの立てている左足に当たると
”カツン”という音と共に跳ね返って芝生へと落ちた。
その”カツン”という音に、再び胸を締め付けられた---
ロイは今度はエドを起こさないように近づくと
(↑さっきまでは石を投げてたくせに勝手な話だが)
そっと寝ているエドの隣に腰を下ろした。
石を当てられても痛みも感じない機械鎧---
自ら招いた運命の為に、ドンドンと危険な道へ入っていく兄弟を
自分はいつまで、冷静に見守れるだろうか?
いや、もう既に、冷静ではないのかも知れない・・・
”エルリック兄弟がどこそこでまたやらかしたってさ”
そんな報告を聞くたびに、どれほど心かき乱されることか・・・
確かに”鋼の錬金術師”の称号を持つ彼が
生半可なことではやられはしないだろうとは信じている。
だがしかし・・・
必ずしも安全とはいえないこの軍司令部で
小石を投げつけられても起きないほど熟睡している彼を見ると・・・
「こんなに小さな体で・・・」
だからこそ、自分の目の届く場所に置いておこうとしたのだ!!
そうすれば、自分がいつでも守ってやれる。
それ以前に、危険を近づけたりはしないのに!!
いや、そうじゃない!
私は卑怯だ---
旅を続け、真実を手に入れ、元の体に戻ったなら
きっと彼は国家錬金術師の称号を軍へ返上し
私の前からも姿を消すだろう---
それこそ、私はその日を冷静に祝ってあげられるだろうか・・・
「すまないな。鋼の・・・」
ロイがそっとエドの頬にかかる髪を払うと
悩みの種の張本人が、鬱陶しそうに目を開いた。
「悪い。起こしたか?」
「大佐・・・?」
ロイの気持ちなどお構いなしに、エドは体を起こすと
大きなあくびをひとつ。
そんな様子を見ていると、思わずロイの顔にも笑みがこぼれてくる。
「・・・なんだぁ?ひょっとして、落書きでもしたんじゃねぇだろうなぁ」
そう言って、さっきロイが触れたばかりの頬をこするエド。
そんな子供らしい発想や仕草が
普段の大人びたエドも実はまだほんの少年なのだと実感させる。
「いや・・・」
思わず噴出すロイを面白くなさそうに見るエドに
さっきまでの自分の葛藤を
いっそ話してしまいたいという衝動に駆られてしまう---
「鋼の・・・」
「あぁ?」
そんな訳にはいかない。
わたしは大総統になる者だ・・・
個人の感情など後回し・・・
国家錬金術師は国家の駒だ・・・
「いや・・・君と居ると、立場と理性を忘れてしまいそうになるよ」
「ふん。そんで、その”理性”とやらのお陰で落書きは思いとどまったってか?」
昼寝を邪魔されて不機嫌そうに吐き捨てるエドを
突き飛ばすように寝転ばせる。
・・・理性・・・
もしそんなものがわたしの中にあるのなら
今こそその力を発揮してくれ・・・
でないと・・・
ロイはふっとひとつ息をつくと
エドから目を離し、努めていつもの憎まれっ子口調で言う。
「ここだって安全な訳じゃない。私が居る間に休んでおけ」
訳も分からずキョトンとロイを見つめるエド。
「どうした?鋼の。私は暫くサボり中だ。今のうちに安心して寝ておけ」
「・・・安心できるか!・・・あんたが一番信用ならねぇんだよ」
そう言うと、エドは、ゴロンとロイに背を向けて寝転びなおした。
この少年は、一体どこまで行くのだろう・・・
そして、この先、どういう運命を辿るのだろう・・・
それでも今は、何も考えずに休んでくれればそれで良い・・・
ロイは早くも再び寝息を立て始めた少年を
今度こそ起こさないように
そっと空を見上げた
とうとう書いてしまった;初の鋼小説^^ゝ
まぁ、ウチのサイト、このくらいのラブっぷりならOKですよっていう
基準にして頂ければと思いまして///
ぷりこがエドを見ていて思う気持ちは
まるっきり今回の小説の中の大佐と同じ気持ちです。
なので、何も考えずにスラスラと書いてしまいました(笑)
旅の応援をしたい気持ちの反面
無理をしないで欲しいという気持ち
でも、エドさんたちの決意の固さを思うと
何も言えないですよね。
なんだか切ない///
こんなぷりこの妄想ワールドに
お付き合い、ありがとうございましたvv