その後、博人の部屋の持ち物の中から、私を自殺に見せかけて殺した現場で発見されるはずだった、遺書が出てきた。
その、”私の遺書”にはこう書かれていた。
『 これまでの事件の犯人は 私です。
私が殺した三人は、この旅行で、
私を襲う計画を立てていました。
私はその事を、偶然知ってしまったのです。
博人、萌、栄子の三人に相談しても、
『きっと冗談だよ』と笑うばかりで、
取り合ってはくれませんでした。
私にとって、あの出来事は
笑い事ではなかったのです・・・
仲間だと思っていたみんなは本当は、
バラバラだったと思い知らされたのです
でも、私には、これ以上、
仲間を苦しめるような事は、出来ません。
三人も殺しておいて、
何をいまさらと思うでしょうが、
残された三人は、私にとって、
少なからず、心の支えだった事に、
気付いてしまったのです。
ご迷惑をおかけして、
本当に申し訳ありませんでした。
山口 美咲 』
私は、この”私の遺書”を見て、涙が頬を伝い落ちるのを止めることが出来なかった。
博人は一体、どんな気持ちで、この”遺書”を書いたんだろう。
だって、あの時、確かに博人は『そんなの冗談だよ』って笑い飛ばしたのに・・・。
私だって、博人たちが取り合ってくれなかった事はショックだったけど、だからと言ってその事を恨んではいないし、逆に、みんながいつも通りに接してくれた事で、早く立ち直る事が出来たのだ。
私が、何も言えずにその”遺書”を見つめていると、萌が、口を開いた。
「美咲。ひょっとして、あの時、博人が本気で美咲の事笑ったんだって思ってる?」
萌の問いに、私は答えられなかった。
「博人、泣いてたんだよ。あの時」
私がはっとして、萌の方を見ると、萌と栄子は顔を見合わせた。
「美咲、あの時博人に、『まだ何も起こってないんだから、別に良いけど』って言ったでしょう?でも、博人にとっては、美咲があの三人を許した事が我慢できなかったのよ」
萌の言葉を引き継いで、栄子も言った。
「美咲は、ホントは気が小さいんだから、冗談だと思わせといた方が良いんだって、自分一人であの三人と話しをしに行ったのよ」
そんな事、私は正直言って、考えた事もなかった。博人の本当の気持ちなんて・・・
その後の萌と栄子の言葉は、ほとんど私の耳には入らなかった。
ただ、どっちが言った言葉だったか、
「博人は、別れた今でも本当に、美咲のこと、大切に思ってたのね」
と言うセリフが、いつまでも頭の中に染み付いていた・・・
最後に、別荘を出て行く時に、ちょっとだけ振り返った博人の顔が、頭の片隅に残っていた。
博人は本当に、私のメッセージとしてあの暗号を残したんだろうか。
私にはやっぱり、博人は誰かに止めて欲しかったんじゃないかと思えてしまう・・・
こうして、私たちの、最後の旅は、悲しすぎる幕を引いた。
<THE END>
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