電気をつけたまま、部屋のベッドの上に横になっている美咲。
        不意に何かを思いついたように起きあがり、紙とペンを取る。
  美咲   「結局、あの暗号には、どんな意味があんたんだろう」
        つぶやきながら、ペンで紙に、暗号を書く。

      
  1475369/258
      
  14789/14728369
      
  12358/14728369


  美咲   「あれ?」
        美咲、何かに気付いたように、紙を見なおす。
  美咲   「2つ目と3つ目、/の後が同じだ」
        美咲、じっとその紙を見つめて考えている。
        そこに、ドアをノックする音。
        美咲、紙をベッドの上に置き、ドアを開ける。
  訪問者  「ちょっと今いいかな?」
  美咲   「どうぞ」
        美咲、訪問者を部屋に招き入れる。そのまま自分はベッドに腰を下ろし
        訪問者にイスに座るように手ですすめる。
        訪問者、イスに座りながら、ベッドの上に置かれている暗号の紙に目を
        やる。
  訪問者  「この数字・・・」
  美咲   「うん。この事件で出てきた暗号なんだけど。今これについて考えてたと
        ころだったの」
        訪問者、じっとその暗号を見る。
  美咲   「あなたも何か思いつかない?ほら、今気が付いたんだけどこの下の2
        つ、/の後ろが同じなのよ」
        美咲、体を横に向け、イスに座る訪問者に背を向ける形で、ベッドの上
        の紙を指差す。
        訪問者、美咲の後ろから覗きこむような形で、紙を見る。
  訪問者  「分かるよ、自分で書いたんだから」
        美咲、何だか分からないという顔で、訪問者の方を振り返ろうとする。
        その時訪問者、後ろから美咲に抱きつくように手を伸ばし、美咲の前か
        ら、美咲の胸に包丁を突き立てる。
        美咲、何が起こったのか分からないような表情で、訪問者を見る。
  美咲   「・・・あなたが犯人だったの?・・・」
        訪問者、頷く。美咲、途切れ途切れになおも聞く。
  美咲   「だって・・・犯人なら、さっき・・・つかまったはずじゃ・・・」
        訪問者、包丁の柄の指紋を拭いながら、答える。
  訪問者  「彼女は、最初から、犯人を知ってた」
  美咲   「あなたを庇ってたの?・・・どうして・・・」
        訪問者、何も言わず、ただにやりと笑う。
  美咲   「なんで・・・私を・・・」
        訪問者、後ろから美咲に抱きつく形で、美咲の手を取り、包丁の柄を逆
        手に握らせる。
  訪問者  「身代わりに捕まってくれた彼女を助けるには、真犯人が必要だから」
        訪問者、ベッドを離れ、イスに座り、美咲を眺める。
        美咲、苦しみの中、次第に意識が薄れてゆく。
        訪問者、ポケットから封筒を取り出し、机の上に置くと、鍵をかけずに部
        屋を出て行く。
  美咲   薄れゆく意識の中でのモノローグ
        「(・・・あの机の上の封筒は何・・・・私このまま死ぬの?・・・私が真犯 
        人にされるの・・・ああ・・・だから、前から刺したの・・・でも・・・どうして・
        ・・・・どうしてあの人が・・・)」
        美咲、そのまま意識を失う。

        ----翌朝----
        再び別荘内を警察が調べている。
        リビングには、残された男女2人が、ソファーに黙って座っている。
        刑事、リビングに入ってくると、2人の向かいのソファーに腰を下ろす。
  刑事   「現場の状況から見て、自殺の線が強いでしょう」
        2人、黙って目を伏せる。
  刑事   「非常に残念ですが、これまでの事件の犯人も、山口 美咲さんだった
        ようです。現場に遺書が残されていました」
        刑事、テーブルの上に封筒と紙を置く。
        封筒には、『遺書』と書かれていて、紙にはその内容が書かれている。
        『 これまでの事件の犯人は 私です
          去年の夏、藤田、野上、健の3人は、私を強姦しようとしました。
          未遂でしたが、その事で、私は博人とも別れてしまいました。
          博人は傷ついた私を庇ってくれず、
         栄子、萌は博人に好意を持ってたから、それを喜んでいる様でした。
         だから、今回の犯人役も、この3人のうちの誰かにやらせようと、初
         めから決めていました。
         でも、彼女は、みんなの前で、自分が犯人だと言った。
         私が犯人だと知っていて、庇ってくれたのかも知れません。
         やはり私は、そんな彼女に罪を着せる訳にはいきません。
         ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした
                                      山口 美咲』
        2人、読んだ遺書を、テーブルに戻す。
        男、肩を落としひざに手をついて、下を向く。
        女、顔を手で覆い、泣く。
  刑事   「これにかかれている事・・・去年の夏の強姦未遂事件は、事実なんで 
        すか?」
        男、下を向いたまま、答える。
  男     「事実です。あの時、僕は、『未遂だからいいよ』と言った美咲が許せな
        かった。それで別れたんです。僕がもっとちゃんと美咲を分かってあげ
        て、傷ついてるはずなんだと気が付いていたら、こんな事にはならなか
        ったのに・・・」 
  刑事   「あなたは?」
        刑事、女に向かって問い掛ける。
        女、泣きながら、頷く。
  女     「事実です。でも、私たち、決して喜んでたわけじゃない。美咲が何も無
        かったように振舞ってたから、私たちが大騒ぎしたら、逆に美咲を傷つ
        けるんじゃないかって、相談して、明るく振舞うようにしてたんです。でも
        その事が、かえって美咲を傷つけてたなんて・・・」
        刑事、納得したように頷く。
  刑事   「あなた方のおっしゃる事が本当なら、今回の事件は、誤解が誤解を呼
        んだ、悲しい事件ですね。もっと早く、あなた方が、気持ちを伝えていれ
        ば、今回の事件は防げたのかも知れません」
        男、すすり泣く。
        女、泣き崩れる。
  刑事   「とにかく、これで、事件は本当に解決です。あなた方は、亡くなった方 
        の分まで、しっかりと、残りの大学生生活を頑張ってください」
        刑事、そう言うと、リビングを出て、現場へ戻る。
        部屋にはいつまでも、2人の泣く声が響く。
        泣きながら、ひそかにほくそえむ、真犯人----
  真犯人  「(これで、本当に、事件解決・・・ようやく終わった・・・)」

        こうして、この別荘を舞台にした連続殺人事件は、幕を閉じる。

<THE END>

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