その後、博人の部屋の持ち物の中から、私を自殺に見せかけて殺した現場で発見されるはずだった、遺書が出てきた。
その、”私の遺書”にはこう書かれていた。
『 これまでの事件の犯人は 私です。
私が殺した3人は、この旅行で、
私を襲う計画を立てていました。
私はその事を、偶然知ってしまったのです。
博人、萌、栄子の3人に相談しても、
『きっと冗談だよ』と笑うばかりで、
取り合ってはくれませんでした。
だから私は、最初の夜にコーヒーを入れ、
一番睡眠薬を入れることが可能だった萌、
密室のトリックに気付いているであろう栄子、
暗号が指し示す博人のうちの誰かに
犯人役をさせるつもりだったのです。
でも、私には、これ以上、
仲間を苦しめるような事は、出来ません。
3人も殺しておいて、
何をいまさらと思うでしょうが、
残された3人は、私にとって、
少なからず、心の支えだった事に、
気付いてしまったのです。
ご迷惑をおかけして、
本当に申し訳ありませんでした。
山口 美咲 』
私は、この”私の遺書”を見て、涙が頬を伝い落ちるのを止めることが出来なかった。
博人は一体、どんな気持ちで、この”遺書”を書いたんだろう。
だって、あの時、確かに博人は『そんなの冗談だよ』って笑い飛ばしたのに・・・。
私が、何も言えずにその”遺書”を見つめていると、萌が、口を開いた。
「美咲。ひょっとして、あの時、博人が本気で美咲の事笑ったんだって思ってる?」
萌の問いに、私は答えられなかった。
「博人、泣いてたんだよ。あの時」
私がはっとして、萌の方を見ると、萌と栄子は顔を見合わせた。
「美咲、あの時博人に、『まだ何も起こってないんだから、別に良いけど』って言ったでしょう?でも、博人にとっては、未遂だろうが何だろうが、美咲が傷つけられたって事が許せなかったのよ」
萌の言葉を引き継いで、栄子も言った。
「美咲は、ホントは気が小さいんだから、冗談だと思わせといた方が良いんだって、自分1人であの3人と話しをしに行ったのよ」
そんな事、私は正直言って、考えた事もなかった。博人の本当の気持ちなんて・・・
その後の萌と栄子の言葉は、ほとんど私の耳には入らなかった。
ただ、どっちが言った言葉だったか、
「博人は、別れた今でも本当に、美咲のこと、大切に思ってたのね」
と言うセリフが、いつまでも頭の中に染み付いていた・・・
こうして、私たちの、最後の旅は、悲しすぎる幕を引いた。
<THE END>
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