あなたはとにかく慎重に
一歩一歩踏みしめながら崖を降りていった
ここまで来て失敗したくはない
ロープが崖に擦れて切れてしまわないように
注意深く何度も上を見上げながら
少しづつ、だが確実に降りていく

長い時間が過ぎて---
ついにあなたの足が
何時間かぶりに大地を踏みしめた
あなたはロープをはずそうとするが
固く絞めていたからか
興奮で手が震えているからかなのか
なかなかうまくいかない
あなたはもどかしくなって
リュックからサバイバルナイフを取り出すと
ロープを切って走り出した
ひげの老人はとっくにあなたに気付き
立ちあがって待っている
走り寄るあなたを満面の笑顔で迎えると
大きな手であなたの方を掴んだ
「おめでとう!!あなたならきっと
やってくれると思っていたよ」
あなたは声も出ない
笑顔で返すと老人はさらに嬉しそうに
興奮して話し続けた
「あなたにはあの立て札が読めたのかね?
・・・いやいや。そんな事はもう
どうでもいい事だな。
とにかく、あなたはこのサバイバルゲームを
勝ち残ったのだからな」
そう言うと老人は
あなたを食事に招待してくれた
湖のほとりにセッティングされたテーブルに
豪華な食事・そしてお酒
そしてその席で
老人は今回のゲームの賞金と称して
封筒をあなたに渡した
中を見なくとも
それがとてつもない金額だと分かる
「久しぶりに興奮させてもらったよ」
老人は嬉しそうに何度も言った

あなたは今
何とも言えない達成感に酔いしれていた
確かに大金は予想外で嬉しい
でも、あなたはそれ以外に
もっと大切なものを手に入れたのだ
---諦めずに勇気を持ちつづける事---
老人にとっては
金持ちの道楽であったのだろうが
あなたにとっては
一生忘れられない経験だ

その日あなたは
これまでにない充実感に包まれて
最高の時間を過ごしていた

<THE END>

次のページへ