あなたはとにかく慎重に
一歩一歩踏みしめながら崖を降りていった
ここまで来て失敗したくはない
ツタが崖に擦れて切れてしまわないように
注意深く何度も上を見上げながら
少しづつ、だが確実に降りていく
どのくらい時間がたっただろう
何度かツタを変え
慎重に降りていくあなただが
なかなか思うように進まない
ふとあなたが下を見たその瞬間
手にしていたツタが
上の方でブツリと切れてしまった
あなたは慌てて崖にしがみついたが
完全に命綱を失ってしまった
辺りを見ると
少し左側にもう一本ツタが生えている
そこまで何とか移動できれば
何とかなるかも知れない
あなたはゆっくりと
足を横へと動かした
しかし、足場は無情にも崩れ去り
あなたの体を空中へと放り出してしまった
あなたはまっさかさまに
落下していく中
視界の隅にひげの老人を見た
身動きもせずこちらを見ている
手遅れなのか・・・
このまま死ぬのか・・・
ここまで来たのに・・・
もう出口はすぐそこだったのに・・・
それがあなたの意識の中の
最後の言葉だった・・・
やがてあなたの体は湖へと投げ出され
滝壷に吸い込まれるように消えていった
<THE END>
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