僕の方を、みんなが同時に振り返った。
マフラーのおばさんが、また、楽しそうに笑いながら、
僕の方へと 近づいてきた。
でも、もう僕はひるまない
僕には自信があった。
もし、僕も後ろのおじさんも、どっちも赤だったら、
赤いリボンは二個しかないんだから、
一番後ろのおばさんは、すぐに
自分は白いリボンだと気付くはずだ。
つまり、一番後ろのおばさんが、
これだけ時間が経ってもわからないって事は、
僕とおじさんが、”赤と白”か、”どっちも白”と言う事だ。
もちろん、この事は、後ろのおじさんも
気付いてるはずだ。
ってことは、もし僕が赤だったら、
後ろのおじさんは、自動的に白ってことになる。
それなのに、おじさんが
こんなに時間が経っても、何も言わないって事は
僕が赤いリボンじゃないからだ。
「なかなか、勇気のある子だね、ほら、
自分の目で、確かめてごらん」
そう言うと、マフラーのおばさんは、
僕の頭の上から、帽子を取って、
それを、僕へと手渡した。
その 帽子の リボンの色は・・・・・
やっぱり白だ!!
「やられたわね。約束どおり、
女の子も帽子も返してあげるよ」
「ホント!!」
僕は思わず、おばさんの腕をつかんだ。
「ホントよ。さぁ、この小屋の外に、女の子が待ってるよ。
早くあの子を連れて、家に帰りなさい」
僕は、おばさんの言葉も半分しか聞かずに、
外に飛び出した。
そこには、ちゃんとみずほちゃんの姿があった。
みずほちゃんは、男の人とベンチに座ってて、
僕を見つけると、にっこり笑って、手を振った。
僕はとにかく、一刻も早く、この場所を離れたくて、
みずほちゃんの手を取った。、
「みずほちゃん、大丈夫?怪我とかない?
ひどいことされなかった?」
みずほちゃんは、キョトンとした顔で、僕を見ている。
「大丈夫。ひどいことなんてされてないよ」
みずほちゃんが、あまりにものどかな顔をするから、
僕の方が、逆にキョトンとしてしまう。
「怖い顔して、どうしたの?」
みずほちゃんの問いに、
僕は一気に体の力が抜けてしまった。
どうやら、僕は、
自分が思ってた以上に 緊張してたらしい。
ふと、みずほちゃんの横にいる男の人を見て、
僕は、ビックリして、思わず声をあげた。
「みずほちゃんのパパ!!」
そこにはみずほちゃんちのパパが、
にっこり笑って 立っていた。
ガタンと音がして、振り返ると、
今度は、さっきまでいた休憩小屋から
僕のパパとママと、
みずほちゃんちのママが出てきた。
僕は、何がなんだか さっぱり分からない。
でも、みずほちゃんは、
もう、全部分かってるみたいだった。
「犯人は パパたちだったのよ」
みずほちゃんは、僕の手を取って、そう言った。
どういう事だ???
僕が 一人でキョロキョロしているのを、
みんなが クスクス笑いながら見ている。
なんだか、仲間はずれみたいで
ちっとも面白くない気分になった。
「なんだよぉ。僕一人で何にも知らなくって、
馬鹿みたいじゃないか!!」
僕がむくれると、みずほちゃんが優しく言った。
「私も、小屋から連れ出されるまでは、
何にも知らなかったのよ」
そう言われても、まだ、気分は収まらない。
だって、僕は あんなに怖い思いをしたんだ!!
あのときの僕の気持ちなんて、
きっと 誰にも分かりっこない。
だいたい、なんで、パパたちは
こんな手の込んだ事したんだ。
その時、僕のママが、すまなそうな顔で言った。
「怖がらせて、ごめんね。
でも、何回言っても、貴博たちが、小屋で遊ぶから、
ちょっと 脅かしてやろうと思ったの」
ママに続いてパパが
「でも、貴博、見なおしたぞ。
みずほちゃんのために、あんなに一生懸命戦って。
かっこ良かったぞ!」
と、僕の頭をなでてくれた。
最後に みずほちゃんが
「貴博くん。私のために、とっても怖い人と
勝負してくれたんだってね。
ありがとう!!」
って、ほっぺにチュウをしてくれたから、
僕の機嫌はすっかり良くなって、
今度は 一気に英雄にでもなったような気分に
なってしまった。
結局、これからは、良く注意すれば
小屋で遊んでも良いと、お許しをもらった。
パパ、ママ、もちろん注意はするけど、
ホントは、こんなスリリングな冒険だったら、
いつだって 大歓迎なんだ!!
ね!みずほちゃん!!
<END>
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